オリエント急行の殺人 MURDER ON THE ORIENT EXPRESS アガサ・クリスティ 中村能三 訳

アガサ・クリスティの代表作「オリエント急行の殺人」1934年の作品です。有名なリンドバーグ事件がモデルです。当時世界の注目を集めた事件でした。そのリンドバーグ事件をオリエント急行という舞台でミステリにする手腕はさすがです。アガサ・クリスティ自選10のひとつです。

「オリエント急行の殺人」のあらすじ

冬のシリア、アレッポからロンドンへの帰り、オリエント急行を利用したポワロ。しかし大雪の山中で列車は立ち往生してしまいます。その車中でひとりのアメリカ人が殺されているのが発見され…

もう言うまでもないくらい有名です。私がはじめて観たアガサ・クリスティの映画がオリエント急行殺人事件でした。監督はシドニー・ルメットでした。出演者がローレン・バコール、イングリッド・バーグマンなど豪華だった記憶がありますね。

「オリエント急行の殺人」の時代背景

歴史的な背景は「パーカーパイン登場をご覧ください。

1934年といえば「パーカーパイン登場」が出版された年でもあります。パーカー・パインもオリエント・エジプトを休暇旅行中でした。

アガサ・クリスティは1930年に考古学者のマックス・マローワンと再婚して中東方面に同行していたようです。一番目の夫とは失踪したのち1928年離婚しています。ちなみに再婚相手マックス・マローワンは14歳下でした。

年下好きというよりパワーがありすぎていたのかもしれません。アガサ・クリスティのようなタイプは20歳くらい年上がいいと思うんですが。大きなお世話ですね。

リンドバーグ事件

また作中のモデルとなったリンドバーグ事件は1932年に起きました。72日後に誘拐された子供が無残な姿で発見され世界に衝撃を与えます。この事件が発端になってアメリカではリンドバーグ法という連邦誘拐処罰法が制定されました。

容疑者が浮かび上がったのが1934年ですから「オリエント急行の殺人」が出版された時には迷宮入りかと思われていたのですね。1935年ブルーノ・チャード・ハウプトマンに極刑の判決がおり1936年に執行されます。

しかし謎の多い事件です。まずお手伝いヴァイオレット・シャープが服毒自殺をしています。これは「オリエント急行の殺人」と同じです。しかし身代金32,000ドルの行方が判明しませんでした。犯人もはたしてハウプトマンかも判然としません。

リンドバーグ一家も二番目の子供の誘拐を予告する脅迫状がとどきハウプトマンの刑の執行を待たずアメリカを出ています。

しかもこの事件ではリンドバーグ自身も現在疑惑がもたれているようです。ヤバイです。

「オリエント急行の殺人」の舞台シンプロン・オリエント急行

残念ながら私は鉄オタではありません。鉄オタの友人もいません。鉄オタの恐ろしさはオタク前史時代のアニオタの私も承知しております。なのでここではざっくりと解説させていただきます。

ポワロは冬のシリアのアレッポをタウルス急行で出立してスタンブールに向かいます。ハイダルパシャに五分遅れで到着、ボスポラス海峡を渡りスタンブールのトカトリアン・ホテルに到着。ここは現在海底トンネルがあります。大成建設がかかわったトンネルもあります。

しかしすぐ電報がきてシンプロン・オリエント急行でロンドンをめざします。切符はロンドンまで。スタンブールー>カレー間の寝台車の予約です。

その後旧ユーゴスラビア、現セルビアのベルグラードに到着そして現クロアチアのヴィンコヴチとスラヴォンスキ・ブロド間の山中で大雪のため立ち往生します。英雄チトー大統領がいた時代はユーゴスラビアで済んでいたのですが時代はかわります。

ここで事件が発生します。クローズド・サークルタイプの事件です。

「オリエント急行の殺人」まとめ

シドニー・ルメット監督のオリエント急行殺人事件は往年の名優が多数出演の豪華キャストでした。その配役を生かせる力がアガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」はあります。

やはり映画化された「ナイルに死す」(37年)のようにアガサ・クリスティの作品はゴージャスな作品も多いですよね。映像のない時代に本当に現地にいる気分にさせてくれます。

ところでシリアのアレッポといえば現在有数の危険地帯の戦場になっています。アレッポは石鹸でも有名で日本でも愛好者が多い都市です。一刻もはやく平和が訪れることを願わずにはいられません。

またこのシリアでの事件解決前にポワロは「メソポタミア殺人事件」(36年)と言われるアッシリア遺跡発掘現場での美貌の人妻殺害事件にかかわります。

たまたま偶然通りがかるのですが難しい案件でした。

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