ポアロ登場 POIROT INVESTIGATES アガサ・クリスティ 小倉多加志 訳

1923年出版です。14篇。ポワロのキャラ設定の過程が垣間見える短編集です。この短編集ではポワロとヘイスティングズは丁々発止とやりあっています。クリスティも若く、内容が濃いミステリ集です。1920年代のポワロがどうだったのか、イギリスロンドンの雰囲気を楽しめる作品にもなっています。なんとなく自由闊達な気分に溢れたポワロ達です。

1920年代中期までの短編を集めた作品です。

ポワロのデビュー作「スタイルズ荘の怪事件」(1920年)からトミーとタペンス初登場の「秘密機関」(1922年)、ヘイスティングズが嫁を見つけ南米へ去る「ゴルフ場殺人事件」(1923年)、超絶お気楽娘アン・ベティングフィールドと彼女に振られるレイス大佐が初登場する「茶色の服の男」(1924年)までの短編集です。

時代背景的には第一次世界大戦後、ローリング・トゥエンティの時代になります。ロスト・ジェネレーションの世代。

まだイギリスは元気があるような気がします。

この後、キングズ・アボット村において有名事件「アクロイド殺人事件」(1926年)に隠居気味でかぼちゃ栽培中のポワロが関わります。相棒のヘイスティングズがいないので少し寂しそうですが。

<西部の星>盗難事件

謎の中国人が事件に絡みます。

スタイルズ荘の怪事件」(1920年)のメアリ・カベンデッシュのハナシが出ます。

この作品では「貴族年鑑」ですが、「イタリア貴族殺害事件」では『ゴータ年鑑』として貴族の系譜を調べる年鑑が登場します。限嗣相続が登場です。

ヴァレリー・セントクレアの事件についてポワロが言及します。てか、ヘイスティングズに自慢です。

この事件は短編集「教会で死んだ男」(1961年)に収録されている「クラブのキング」の登場人物です。

最後にポワロにバカにされたヘイスティングズが激怒です。この男二人は困ったもんですな。

マースドン荘の惨劇

無意識に記憶していることを知りたいとポワロが言い、連想記憶問答が行われます。

ここで「バーナード」とポワロが言いブラック大尉は「ショウ」と答えます。

バーナード・ショウ。クリスティはたまに出しますね。ビクトリア朝時代の気配です。

そしてとんでもない事件の結末です。

安アパート事件

珍しく、日本政府が盗まれたアメリカの港湾防備施設の書類を欲していると例え話で出てきます。あんまり日本のハナシは出てこないクリスティ作品なのに。そういう時勢だったのでしょう。

国際的な安アパートの案件です。

猟人荘の怪事件

冒頭、治りかけとはいえ、ポワロがヘイスティングズから移されたインフルエンザで調子がよろしくありません。

またここでは「紳士録」が登場です。登場人物に貴族金持ちが多いですな。氏素性を調べることが必要というわけです。インチキもいっぱい出ますからね。インチキの方が多いか。

ジャップが登場して、さっそく「ちび大将はどうしたの?」とか失礼な質問をヘイスティングズに投げかけます。

ポワロは電報でヘイスティングズをコントロールです。良い御身分です。

ポワロがディケンズとシェイクスピアのセリフを間違えヘイスティングズに指摘されます。そんなことあるかよ、です。

で、ラストは復讐の女神が断罪します。

百万ドル債権盗難事件

冒頭のヘイスティングズとポワロの会話がヒントですね。

チェシャー・チーズというお店でビフテキと腎臓入りの腸詰を食べています。

これは食欲をそそる名称でしょうか。キモイというべきでしょうか。キドニーソーセージ?

でもソーセージはイロイロ詰めるんでしょうけど。

エジプト墳墓の謎

ツタンカーメンの呪いが騒がれた時代です。

ツタンカーメンの墓は1922年に発見されました。その後関係者がかなり亡くなり、呪いだと騒がれたようです。子供の頃はマジに信じていました。今はおっさんなので信じていません。

時事ネタを積極的に取り入れるクリスティならではです。おかげで時代背景がつかみやすいですね。

ポワロとヘイスティングズの二人は謎を追いエジプトまで出張ります。

お疲れ様です。

さらに黒魔術だの白魔術だの第二霊だのオカルトテイストがパレードで盛り上げます。

しかし、最後にポワロがカミツレ草の煎じ薬を飲んだ芝居を打ちます。カモミールですね。ここだけピーターラビットみたいです。でもポワロはベンジャミンぽいですが。

で、砂漠でエンド。永遠にエンド。

グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件

海辺のホテルを訪れたポワロとヘイスティングズが巻き込まれる事件です。いや、自分で参加するんですけど。

真珠がなくなります。

段取りが悪いため泥棒一味は捕まります。職人も盗人も段取り八分です。

ポワロは名より実を取りました。

で、謎は「チャコ」です。これ、裁縫に使う固いチョークです。アレか。チャコというのですか。

総理大臣の失踪事件

冒頭、ヘイスティングズの戦争の秘密は葬られたという意味深な言葉から始まり、当時の国際情勢下での英国首相の暗殺未遂事件が語られます。

全然戦争が終わってないじゃん、という感じですがこれは今も同じです。なにも変わっていません。

変わったのは何かです。

ダヴンハイム失踪事件

銀行家の蒸発事件です。

ポワロとヘイスティングズが招待したジャップから話が始まります。

5ポンドを賭けた勝負です。

イタリア貴族殺害事件

ジュリエンヌ・スープ、ノルマンディヒラメの切り身、ヒレ肉、ライス入りスフレです。

ジュリエンヌ・スープはマクロビのデトックススープというわけではないですね。野菜の千切りのスープです。

ノルマンディヒラメはやはりドーヴァーソールというやつですか。

ライスのスフレは知りませんでした。食べたことございません。

これが御貴族様のお食事です。

これでポワロが謎解きです。

謎の遺言書

死んだ叔父との勝負を姪が受けます。アタマの良さとは何かをポワロが語ります。

まったくそのとおりです。

スカッとします。

ヴェールをかけた女

どんでん返しです。

ポワロがどんな人物かわかります。イロイロと。

消えた廃坑

公債と投機のハナシから始まります。ポワロがどのように株を手に入れたかのハナシです。

1万4千株はある事件の謝礼でした。

中国人がらみの事件です。大英帝国はまだ広かったのでしょう。ビルマの鉱山のハナシですが。

ダヴンハイム失踪事件でチラッとジャップの口から出たミラー警部が登場します。

ポワロは彼のことを頑固でバカだとか言っています。この名探偵には国家権力もたいしたもんじゃなさそうです。

チョコレートの箱

ポワロが自惚れた時は「チョコレートの箱」と言ってくれとヘイスティングズに頼むハナシです。

つまりポワロがツメを誤ったハナシです。

善悪の彼岸のハナシです。

ポワロは犯人を見逃します。自分が犯人を突き止められなかったので。

ポアロ登場のまとめ

ロンドンの地名、小道具その他の固有名詞がかなり出ます。ポワロとヘイスティングズは仲がよろしくありません。当たり前と言えば当たり前です。両方ともイイ大人ですが。

灰色の脳細胞云々の有名なセリフが頻繁に出てきます。キャラが確定です。

ポワロ、ヘイスティングズ、ジャップと三人のおっさんキャラが出揃いキャラが確定しましたね。

でも相棒のヘイスティングズは南米にすぐ左遷ですが。

結構、青春しているイイ身分の方々です。

腹持ちのいい短編集です。

ローリングトゥエンティ時代です。パワーがあります。

面白いです。

食べ残すとアシがつくかもです。

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