ムトゥ 踊るマハラジャ

ムトゥ 踊るマハラジャ 作品紹介

今回は1995年に公開されたインド映画、「ムトゥ 踊るマハラジャ」の感想を述べていきます。

タイトルを見る限り、「踊る」と付いているので、ミュージカルなんだろうという想像はつくのですが「マハラジャ」と付くことで、どんな話なのか全く見当が付きませんでした。

踊る大王様?

後で調べたんですが、原題では「ムトゥ」だけなんですね。

偉大な地主様が踊る映画。

確かに何一つ間違ってはいませんでした。

さて、無学な私はインドの事は全くといっていいほど知りません。

文化も階級制度もよくわかっていません。

そんな人間でも、細かい事はどうでも良くなるインド映画を代表する名作を、どのように楽しんだかをご紹介します。

主な人物

物語の主人公は、大地主のラージャに仕えるムトゥ。

おおらかな性格で腕っぷしが強く、歌って踊れる人気者です。

ご主人様は大の芝居好きで、いつもムトゥを連れまわして芝居見物を楽しんでいます。

ご主人様は、ご主人様というよりも、おぼっちゃまと呼んだ方がふさわしい、一見地主の自覚のない困った人のように見えますが、多分何事にも執着が薄い人だと思われます。

使用人に軽口を叩かれても平気、乱闘に参加する場面が2回ありますが、人間離れしたムトゥほどではないにしても、意外な腕っぷしの強さには驚かされます。

ただ執着が薄いが故に、一目惚れした本作のヒロイン、女優のランガナーヤキのピンチに自分をアピールする事もせず、ムトゥに彼女を連れて逃げるように命じて自分はその場でバトルを続けてしまう辺り、基本的に欲が無いんだと思わされます。

それがきっかけでムトゥとランガナーヤキは恋に落ちてしまい、ご主人様は失恋します。

ご主人様のお母様のアンバラ奥様はこの物語のキーパーソンです。

優しくて聡明な賢婦人ですが、怒らせると怖いタイプですね。

基本的に誰も奥様には頭が上がりません。

ただ一度だけ、使用人はたくさんいるので、ランガナーヤキを兄に引き渡してもいいと発言した時だけは、何でそんな事言っちゃうの? と思いましたが、翌日にはランガナーヤキに大変優しく接していたので、息子が殴られているのを見て一時頭に血が上ってしまったんでしょうか。

奥様だけでなく、全般に女性が非常に強いです。

言いたい事を我慢するなんてまずしていません。

インドは男女格差があると思っていたので、少し意外でした。

後半はドシリアス

さて、前半は間違いなくラブコメなのですが、カラフルに衣装チェンジしながらのダンスタイムの後、これは本当に同じ映画? と言いたくなるほどに物語の空気が一変します。

特に元の地主様の身に起こった出来事の回想では、考えさせられる事がたくさんありました。

物語の主な舞台になっているお屋敷ですら、使用人が何十人もいる大邸宅なのに、奥様の兄上には小さな屋敷と言われていたのが納得の、宮殿が元の地主様の住まいでした、

ゆりかごですら、こんなに立派な必要があるのかというほど豪華です。

でもお金に頓着していないので、簡単に人に騙し取られます。

新婚夫婦の結婚祝いに贈る土地の名義が書き換えられてしまっている事で発覚するんですが、地主様は騙すより騙される方が罪が重いと言います。

確かに一理あるんですよね。

あまりにも簡単に騙されてしまったせいで、相手に人を騙すという罪を犯させてしまった。

でもその事で心を痛めるのは根っからの悪人ではなく、弱くてすぐに後悔する人。

この物語の中でも他人にそそのかされて罪を犯してしまった人は罪の意識に耐えられずに更に不幸な結末を迎えてしまいます。

自分が浅い人間だと思い知らされたのが、土地が地主様の物では無いため、譲渡が無効になってしまった新婚夫婦たちの対応です。

無効だった権利書を握りしめて、地主様の宮殿の前に集まった若者たちを見て、待ってー、

誤解なのー! と心で叫んでしまいましたが、若者たちは誤解などしていませんでした。

土地が手に入らなかった事に対しての怒りはもちろんあったでしょうが、立派な地主様を裏切って横領した人間に対して怒っていました。

ここで頭に浮かんだ言葉は「貧すれば鈍する」です。

地主様は普段からお金を人々に分け与えていました。

土地の人間たちを貧させていなかった。

だから鈍することなく、正しい怒りを正しい相手に向けられたのだと思います。

「貧すれば鈍する」という言葉があるのなら、「鈍させたくなければ貧させるな」という事ですね。

安い賃金で人をこき使っておきながら、しっかり働かせようなんてムシのいい考えはイカンということですよ。

全てを知ったご主人様はやはり執着がなく、全てを受け入れます。

流石に立派な奥様の息子です。

途中で大ピンチに見舞われますが、雑に助けられて無事です。

あの高さから落ちて、しばらくうつぶせで川を流れていながら大変タフですね。

それにしても、高い所から落ちるor落とされるは生存フラグなのは、世界共通なんでしょうか。

「俺、帰ったら結婚するんだ」が死亡フラグの頂点だとすると、ものすごく高い所から落ちるのが生存フラグの頂点と言っていいかもしれません。

己の限界を知る

初めは軽い気持ちでラブコメとして見ていたのに、終わった時にはいかに自分が汚れた心の人間であるかを痛感させられました。

一番印象に残っているのが、地主様が人々にお金を配っている場面。

地主様は実に無造作にコインを掴んで手渡しているんですけど、あれ絶対に金額がまちまちなんじゃないかと気になって仕方ありませんでした。

もちろん、この映画の中でそんな不平を言っている人は一人もいませんでしたが、後で揉めたりしないんだろうかなんて思ってしまう辺り、私は一生聖者にはなれないなと、自覚させられてしまったのです。

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