ベツレヘムの星 STAR OVER BETHLEHEM アガサ・クリスティ 中村能三 訳

まさに「クリスマスにはクリスティを」そのものの本です。1965年出版。当然聖書からの引用は多数、天使から聖人、ロバが列した天国のような本です。寓話的な内容から、あの超越した小説「春にして君を離れを」思わせる「水上バス」など非常に密度が濃いです。しかも全然難しくありません。薄いのでプレゼントにも最適です。とくに自分への。11編。

詩篇第19編1節から4節。

1もろもろの天は神の栄光をあらわし、

大空はみ手のわざをしめす。

2この日はことばをかの日につたえ、

この夜は知識をかの夜につげる。

3話すことなく、語ることなく、

その声も聞こえないのに、

4その響きは全地にあまねく、

その言葉は世界のはてにまで及ぶ。

まぎれもないアガサ・クリスティの世界です。

そして「ベツレヘムの星」は傑作短編集です。

ごあいさつ

馬小屋で生まれた子供へのクリスティの祝福の詩になります。

御使いのラッパの一番目です。

アタマの中で鳴り響くことでしょう。

ベツレヘムの星

インスピレーションのあやうさを暗示しています。

ハレルヤ!

大工の夫婦には智慧がありました。

クリスマスの花束

アーサー王伝説で有名なグラストンベリーの地名が謳われています。

寄生木(ヤドリギ)、アイルランドの聖人、パトリックなどが登場するケルティックなクリスマスの言葉の花束ですね。

寄生木(ヤドリギ)の下ではキスをしてもよろしいとかナントカ。むしろしないと別れるとかナントカ。

寄生木の下は昔日のカレカノのアジール(聖域)だったのでしょうか。

いたずらロバ

全然いたずらロバじゃありません。真のV.I.Pを理解できる、知性にあふれかえったキラリ光る慧眼のロバです。

しかも未来を観る、ヴォイヤン(見者)でした。これでヘロデ王の難から一家を救います。多少、天からのサポートはありますが。

ラストに「BE HERE NOW」(いまここ)の気づきを得ます。

黄金、乳香、没薬

東方の三博士が星に導かれ、たどり着いた馬小屋でスヤスヤと眠る嬰児(みどりご)に捧げる三つの贈り物です。

エヴァンゲリオンでも有名なガスパール、メルキオール、バルタザールの三人の博士はゴールド(金)、フランキンセンス(乳香)、ミルラ(没薬)を捧げます。

それぞれ王、生、死の象徴とされているそうです。

アロマオイルや香としても見かけますね。パワーストーンの聖別にも使いました。

「事、畢(おわ)りぬ」とつぶやいた人物とはBEINGです。てか、皆がそうですけど。

水上バス

「ベツレヘムの星」の☆に当たる短編です。

「春にして君を離れ」(1944年)と同じタイプ、一瞥(いちべつ)の体験(悟りとも言います)を一流作家が文章化した稀有な小説です。

しかも「悟り経験」(最近ではPNSE、表現不可能な継続的な経験とか言われているようです。お金が絡んでますが)の完全ダウンロードがなされていない人物を客観的に描写したさらに稀有な小説です。

定着型の「悟り」完全ダウンロードがなされた文学の登場人物にはトルストイの「アンナカレーニナ」の主人公リョービンがいます。

が、こちらのミセス・ハーグリーヴズは自身の悟り体験を定着しないタイプであることを理解しています。しかし、それでも忘れることはないのです。

何度も読み直してみる価値のある最重要な小説です。

夕べの涼しいところ

原子力を含む科学の不安を描いた小説です。

御使いのラッパの7番目が吹かれているようです。

時は来たれりです。

空のジェニー

キャラクターが言うことを聞きません。

いと高き昇進

14救難聖人SFです。舞台は紀元2000年辺りなので今では過去の世界ですが。

転生したらやっぱり聖人だった件とかkindleで読めそうですな。

神の聖者

聖人の行進です。

昇進した各々の聖人の個別象徴アイテムが書かれています。

哀れな子羊たちを天国へサルベージするために降りてくる際の歌でしょう。

アイン・ツバイ・トライとか冒頭にありそうです。

イエイツのイニスフリーの島、アヴァロンのような島、トビウオのアーチをくぐって辿りついた島のようです。

ヨハネ伝からのおはなしです。

カナの婚礼とは6つの水がめの水を葡萄酒にかえたエピソードですね。

ヨハネがどのように黙示されたかが書かれています。

てか、ヨハネは妄想を黙示録にまとめたともとれますな。

なんだよ、11番目はホラ吹きラッパかよとか不謹慎なコトを言ってはいけません。

非常に暗示的な内容です。てか、クリスティの黙示録ですね。

ベツレヘムの星のまとめ

「The Good Shepherd」(小さいひつじが)

というタイトルの讃美歌があります。

ルカ伝にある、羊飼いは羊が100匹いたとしても一匹でも迷ったら探しにいき見つけ、喜ぶものである。

神もまた同じだよ、というありがたい例え話をモチーフにした歌です。

ようするに羊は一匹しかいなくても100匹いたとしても同じで、さらに羊も羊飼いも同じで、見失った羊は自分だと思っている自分だよということでもあります。

ですので見失った羊を探し求める必要は本来ないのです。

なぜなら「いま、ここ」にあるからです。誰もどこにもいっていません。羊もです。星の王子さまもナットクです。

このまま、この流れでカンペキだということです。

イメージしないことです。

最後の短編「島」で天の女王が目の前にいるのに気づかないでいるようなものです。

イメージと違うから。

この「ベツレヘムの星」にはインスパイアされる方がおおいのではないでしょうか。

「ベツレヘムの星」は☆マーク付きの目覚めを促すタイプの小説です。

また、ある意味本格推理ものです。

とくに「春にして君を離れ」(1944年)をお好きな方におススメします。

良いクリスマスを。

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