カーテン CURTAIN アガサ・クリスティ 中村能三 訳


大戦中に執筆され1975年に出版された名探偵エルキュール・ポワロの最後の事件。クリスティがベストの時期に描かれたポワロです。非常に深い内容で恐ろしい事件を扱っています。ポワロが相手にする相手はまさにモンスター。善のメンタリスト対悪のメンタリストの死闘が見事です。

「カーテン」のあらすじ

1916年以来ひさしぶりにスタイルズ荘を訪れたアーサー・ヘイスティングズ大尉。

彼は旧友であるエルキュール・ポワロにひと夏スタイルズ荘での滞在を誘われたのでした。

しかし再会したポワロは老いて立ち居もままならず車椅子の世話になっていました。

そして老いたポワロからヘイスティングズ大尉は気配なき殺人狂のサディストが引き起こした事件を聞かされます。

次の事件を阻止すべくヘイスティングズ大尉もポワロに協力することに・・・

「カーテン」ではポワロは足腰が立たず、ヘイスティングは「ゴルフ場殺人事件」のシンデレラは世を去り末の娘にヤキモキします。ポワロもヘイスティングズもトシをとりました。

しかし頭脳と魅力はふたりともまだまだ健在です。最強の犯罪者を相手にポワロは頭脳戦を展開し事件を未発に防ぎます。

犯人は金銭目当てではない悪の権化そのもののサディストです。彼の望みは他人を意のままにあやつり殺人を犯させること。

モンスター対ポワロ、最後の戦いの結末。舞台はあのスタイルズ荘です。

「カーテン」の時代背景

スタイルズ荘の怪事件は1920年の出版です。

ヘイスティングズは事件当時30歳くらいです。彼は第一次世界大戦からの負傷兵として前線から送り返されていました。もちろん独身です。

この「カーテン」ではヘイスティングズの子どもたちはすでに独り立ちし、末のジュディスという娘が21歳で研究者として博士の助手をつとめています。

アガサ・クリスティは本作「カーテン」では注意深く時代を感じさせるアイテムをはぶいており、いつ出版されても間違いのないミステリにしたてました。

クリスティ1975年の最後の生前出版ですが時代設定に違和感を感じません。

なぜなら登場する犯罪者が現在でもひんぱんにニュースになる最悪の犯罪者だからです。

快楽のためにみずからの行為を被害者のメンタルに作用させ殺人を犯させるのですから。現代にはいたるところに徘徊しています。

ヴァンパイヤは実在する?!

スピリチュアルではサイキックヴァンパイヤとかエナジーヴァンパイヤという存在は一般的です。イメージとしては一緒にいて別れるとドッと疲れるひとです。

ようするに気力を吸い取るわけですね。

このヒトビトの問題は本人にその気がないというのがほとんどです。なかにはその気があるヒトもいます。通常はかまってちゃんとか言われてますよね。

ですがこの手の人物には気力と体力があれば対応策があるのでそれほど恐れなくても大丈夫です。

体力もないし困ったなと思ったら「サイキックプロテクションフレイム」でググってください。

さて「カーテン」で登場するのはサイキックヴァンパイヤではありません。サイコパスです。しかも人をおとしいれそれを糧にして生きている本当のヴァンパイヤです。

マインドヴァンパイヤ・・・

「殺戮のチェスゲーム」というダン・シモンズの小説があります。彼は「ハイペリオン」などのSF小説で有名です。その「殺戮のチェスゲーム」という作品にはひとをあやつり苦痛を糧とするヴァンパイヤが登場します。

彼らはひとを「押す」のです。

まったく「カーテン」の殺人犯と同じです。

シモンズの作品のヴァンパイヤはひとをフイジカルにあやつり自殺させたり殺し合いをさせたりしますが「カーテン」のヴァンパイヤはメンタルをあやつり殺人をおこさせます。

これは非常に恐ろしいことです。

オペラント行動心理学というアメリカで生まれた行動心理学があります。

これはワトソンという学者が創始しました。有名なのはスキナーの実験です。スキナーの箱といわれ刺激と反応で行動強化といわれる行動を作るのですが、血も涙もない心理学といわれたこともありました。

ナチスドイツでも似たような技術が使われました。

最近話題になったメンタルマジック、マジシャンズフォースという誘導は営業などでも活用されています。

しかし善用するひとばかりではありません。むしろ意識的に悪用しているひともいるのです。

これは子どもの行動を例にとると靴を隠したりして相手を追いつめる悪意ある子どもと似ています。

悪意ある加害者の子どもは靴を隠すのが目的でありません。

彼の獲物である被害者の子どもの膨れ上がった切羽詰った行動を拡大させるのが目的です。

彼の喜びは被害者を絶望させることなのです。

このような状況はオトナ社会ではある意味ふつうなのですが、まだ対応するメンタルの術を持たない単純な子ども社会に住むものには致命傷になりえます。

しかしこのテクを幼少時から磨き悪意ある一般人が意識的に使ったら。対応できるひとはマレでしょう。

というより対応しない技術で対応するのですが使われた技術が精緻を極めていたばあい大問題です。

アガサ・クリスティはそれを「カーテン」で描きました。犯人はポワロをもってしてとてもアタマの良い人物だと言わしめます。

エルキュール・ポワロは過去の記憶をトレースする能力に卓越したちからを発揮しますが「カーテン」ではいく通りもの未来をトレースします。

スタイルズ荘の逗留者はいうなればポワロと犯人のチェスの駒なのです。

ふつうの人間はこのような怪物のそばにいるとのっぴきならない状況になります。

おまけに記憶がはっきりしません。

なぜなら自分のおこないは作られた妄想での行動だからです。

アリゾナの魔術師といわれた不世出の精神科医ミルトン・エリクソンのような催眠術の使い手が悪意をもっていたらと考えると身の毛がよだちます。

エリクソンが術を使うといつ使用されたのか気づかないといわれました。

ヘイスティングズにはポワロがいて本当によかったです。

「カーテン」のまとめ

「カーテン」はやはり特別なミステリです。アガサ・クリスティの作品は「悪意の総意」のような犯罪者が時々登場しますが「カーテン」では極まっています。

犯人はまごうことないモンスターです。

利益が他人の苦しみであって金銭ではないのです。絶妙に獲物のメンタルをあやつります。

先見的なミステリです。これが大戦中に執筆されているのですから。アガサ・クリスティはどのような人生を観てきたのでしょうか。

私はポワロものでは「カーテン」をイチバン読み返しています。

ヘイスティングズにも及ばない人物には励みになりますからね。

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