1954年。超有名なタイトルです。1957年にはビッグネームのビリー・ワイルダー監督、脚本で映画化されています。タイロン・パワー、チャールズ・ロートン、そしてあのマレーネ・ディートリッヒが出演しています。邦題は「情婦」。短編集「死の猟犬」には結末が異なる小説版が収録されています。
この戯曲「検察側の証人」はクリスティの初期の短編をもとにしています。
ま、普通にスゴイですね。
また、イギリス人の外国人への差別意識についても言及されています。
ポワロもいつも差別されていますから、一般的な感情だったのでしょう。
島国で帝国主義。EU脱退。
難しい国ですな。
他人事じゃないですね。
「検察側の証人」のあらすじ
第一幕でヒマそうなウィルフリッド卿の事務所に事務弁護士メイヒューに連れられ一人の青年が訪れます。
彼こそは殺人の容疑でメディアにも大々的に取り上げられたレナード・ボウルでした。レナードは27歳、非常に愛層の良い好青年に見えましたが、金持ちの夫人を撲殺したと目されていた人物なのでした。
ウィルフリッド卿、メイヒューの両弁護士は当日のレナードのアリバイを聴取します。しかし、警察が登場、レナードを殺人容疑で連行します。
そのすぐあと、レナードの会話に頻繁に登場する良妻、ローマインが相談に訪れます。彼女はドイツ人でした。しかも彼女とレナードは正式な婚姻関係ではありません。不倫関係の上での略奪婚でベルリンの壁の向こう側から連れ出された女性だったのです。ローマインはクールな印象を二人の弁護士に残し、立ち去ります。
第二幕は六週間後の朝の法廷で始まります。そこでは最後に検察側の証人として出来た女房だとレナードが口にしていたクールビューティのローマインが証言台に立ちます。しかし彼女は意外にも内縁の夫レナードの不利になる証言をするのです。一方的にレナード不利な状況の中、第三幕へ。
そして第三幕目の一場はその日の夜、ウィルフリッド卿の事務所に一通の手紙を持参した若い女性が訪れるシーンから始まります…。
そして翌朝の二場目へと進み、予期しないどんでん返しが続いていくのです。
「検察側の証人」の時代背景
アガサ・クリスティの戯曲と言えばコレ!の「ねずみとり」(1954年)と同時期の出版になります。
また、ミス・マープルの「ポケットにライ麦を」(1953年)、ポワロものでは誠実な老遺言執行人が行動を起こす「葬儀を終えて」(1953年)と同時期の作品になります。
時代背景はそちらをご覧ください。
クリスティは64歳です。
「検察側の証人」のまとめ
冒頭、カーター氏がメイヒュー氏に神経痛の具合はどうだ?と尋ねられ、痛むのは東の風が吹くときだけなんです、と答えます。
で、その東の風ってのは?
イギリスでは北海から吹く冷たい風のことです。これは神経痛のオヤジには辛いかもです。今だとロキソニン飲みまくるところですか。でも腎臓に来るお年頃ですからね。
日本では一般的に「あゆ」「こち」「とうふう」(YMO好きならココ「トンプウ」でしょうが)と言い春先、夏の季語になっています。
似たような風に薫風(くんぷう)という風がありますが、こちらは新緑が香るもっとおだやかな風になります。一般的に五月の風ですね。
この「検察側の証人」はとにかくビリー・ワイルダーの「情婦」(1957年)で有名です。
とにかく、(とにかく多し!)俳優が豪華、タイロン・パワー、チャールズ・ロートン、そしてドイツ人の年上の内縁の妻ローマイン(映画ではクリスティーネ)にマレーネ・ディートリッヒが扮します。
リリーマルレーンのディートリッヒでもあります。(まあ、ララ・アンデルセンのリリーマルレーンではありますが)
ディートリッヒ風の誰か。
そして元の脚本が抜群ですので60年以上の時を経ても色褪せることないモノクロ映画になっています。
とにかく予期せぬ展開で度肝を抜かれます。
また短編集「死の猟犬」(1933年)の方では違うラストになっており、こちらはこちらで別のテイストが楽しめるでしょう。
映画、戯曲、短編、すべておススメいたします。