アクロイド殺人事件 THE MURDER OF ROGER ACKROYD アガサ・クリスティ 中村能三 訳

1926年、たまたまカボチャを栽培していた床屋のポロット氏がキングズ・アボット村での事件を解決します。というか隠居気味の名探偵ポワロが事件を解決します。発表された当時話題になった有名作品です。ヘイスティングズは南米に行ってしまいポワロ氏はどこか淋しそうです。自選10作。

「アクロイド殺人事件」のあらすじ

キングズ・アボット村の重要な二軒の家、ファラーズ夫人のキングズ・パドック荘とロジャー・アクロイド氏のファンリー・パーク荘。

そのファラーズ夫人が自殺、続いて翌日ロジャー・アクロイド氏が刺殺されました。アクロイド氏は資産家です。

このふたつの事件は関連があるのでしょうか。それとも単純な財産狙いの殺人事件なのでしょうか。ロジャー・アクロイド氏の書斎にあったはずのファラーズ夫人からの手紙がなくなったことにより事件は複雑な様相を呈していきます。

しかしこの村にはカボチャ栽培をしている理髪師のポロット氏が滞在しているのでした。

もちろん違います。村人から間違ってそう呼ばれ続けている名探偵エルキュール・ポワロ氏です。

「マギンティ夫人は死んだ」(52年)でも逗留先のサマーヘイズ夫人とダンナから名前のカンジで理容師かピクルスだと思われています。

その26年前にも本編の語り手であるシェパード医師から理容師に間違いないと思われています。しかもほぼ村人全員から名前を間違っておぼえられています。

困ったものでござる。

ポワロが同じように田舎に別荘を購入して蟄居しようと試みて失敗して事件に遭遇するのには成功したミステリに「ホロー荘の殺人」(46年)があります。

こちらでもイナカ住まいは向いていないとポワロは思っていたようですが、戦後すぐですからね。ロンドンでは物資が不足していて美食家のポワロ氏は食生活に難儀していたのでしょうか。いや、彼に限ってそれはないですね。

「アクロイド殺人事件」の時代背景

昭和元年です。

この年の12月3日、アガサ・クリスティが失踪しました。

大事件です。

夫であるアーチボルト・クリスティに愛人がいたのが判明しショックを受けたアガサ・クリスティ36歳は行き先を告げず失踪、11日後に発見されます。

事件の直前に彼女は母親を亡くしていて精神的にも参っていたのでしょう。

生きていれば人生には色々あります。大作家といえど例外はありません。

この事件以降アガサ・クリスティの作品は徐々に固有の色彩を放つ特別なものに変容していきます。

アーチボルトとは28年に離婚しています。

その二年後の1930年に中東旅行中に知り合った14歳年下の考古学者マックス・マローワンと結婚しています。えー、アガサは38歳ですか。相手のマックスは24歳ですか。

前後しますがこの年4月21日に現エリザベス女王がお生まれになっています。

本作の感想は新潮社版です。

カボチャをつくる男もしくは床屋、もしくは名探偵

シェパード医師を前にチョコレートをすすってます。

ここでポワロの印象が確定しました。わたし的に。

ヘイスティングズがいればと何度も残念がっています。なら、もう少し仲良くしなさいよって。

本件は「ゴルフ場殺人事件」(23年)で見つけた嫁とともに南米へ去ったあとの事件です。なんかバカにしていたフランスのジロー刑事のように四つんばいになってますが。

ですがやはりエルキュール・ポアロ氏は最後にはやさしく頼りにされます。

「アクロイド殺人事件」のまとめ

この「アクロイド殺人事件」は語るまでもなくスサマジく有名な作品です。ミステリが苦手だった中学生のわたしでさえ知っていたくらいですから。

今回どのように紹介しようか迷いました。なんか書くとそれまでのような気がしたからです。まとめようもありません。いつもなにもまとまっていないまとめですが。

ただ、この「アクロイド殺人事件」がポワロの作品だとは知りませんでしたが。

初めて読んだのが中学三年生です。ミス・マープルと13の謎と一緒に買いました。

でもボキャブラリーが不足していてイメージしずらかったのをおぼえています。なんかすごい古いイギリスのハナシだなという印象でした。

そしてオトナなったらきっと読めるはずだと思って今、読んでいます。ただ当時から時代背景や文化的な背景が理解できないとクリスティのミステリ群は読めないのではないかという危惧は感じていました。

50年以上に渡る作品群です、今回挑戦してみてその考えはあながち間違っていたわけではなかったとも感じました。ありがたいことにクリスティはその当時の最新のトレンドを取り入れてくれたいたのでイメージも掴みやすかったです。

これはレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロゥでも共通していて「ウエッジウッド焼き」のカップとか出てきていましたが当時のわたしはそれがどんなものか理解が及びませんでした。

ワイルドストロベリーだのブルーエレファントだのの名前を知ったのはずいぶんあとのことになります。

ちなみにこの「アクロイド殺人事件」にはマージャンが出てきます。「チー」を「チャウ」とか言ってますが。中学生ながらマージャンは知っていました。しかし、ブリッジはわかりませんでした。これは今もですが。

マージャンは当時のイギリス上流階級で流行っていたのでしょうかね。シャンハイの租界は活気がまだあった頃です。上海倶楽部。上海娘、李香蘭(山口淑子)が蘇州夜曲を歌う14年前のハナシです。

この「アクロイド殺人事件」でポワロの長編はすべて紹介し終わりました。

のこりはトミーとタペンスシリーズとバトル警視の二作品、あといくつかの長編と短編、それに戯曲になります。

全作品を紹介し終えられたら、もう一度読み返して各文章を再度構成し直して関連性やクリスティの世界観をさらに掘り下げられたらな、と思っています。

気長にお付き合いください。

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